Special Interview

クラブハウス建築美学 特別篇
建築家 大宇根弘司/グランフィールズカントリークラブ

本物の持つ普遍性。

Text by Kobayashi Kazuto, photos by Ishizuka Sadato

「時が経つにつれて愛着が湧き、大事にしたくなる建物を造りたい」

景観に溶け込み、なおかつ圧倒的な存在感を放つエクステリアの素材は石。この外壁こそ建物のコンセプトを象徴している素材といえるだろう。

「本物にしたい、というオーナーの思い入れが物凄く強かったもので、新建材は一切使っていないのがこの建物です。私は通常、外壁にレンガを用いるのですが、シドニーの砂岩にしたいというオーナーの強いこだわりがあったので、だったらちゃんと下から積むのが原則ですから、現地に何度も足を運んで、向こうで製作して持ってきたわけなんです」

最も薄いもので75ミリという厚みのある砂岩を積み上げているがゆえの重厚感。膨大なコストがかかるこの方法を選択したのは、最高のものでゲストをもてなす、という施主の強い意志の表れだった。屋根がすべて緑青銅板なのも、時間の経過で劣化するのではなく、むしろ風雪を刻んだことで趣きが出るようにという思考からの選択だ。そしてこれは建築家の信念でもある。

「日本の建築は非常に寿命が短いんです。ひとつは地震の問題があって、地震がくるたびに耐震強度の考え方が変わり、基準がどんどん厳しくなる。それが壊してしまう理由のひとつですが、いかに長く使い続けるかという発想は僕の目から見ると希薄で、造ったときに一番美しい建築がもてはやされる傾向があります。しかし私はすぐに飽きてしまうような建物ではなく、みんなが愛着を持ってくれて、大事にしなきゃと思うような建物を造ることを基本にしています。その上でいかに省エネで快適に過ごせるか、ということを考えるのが建築家の役目だと思っています」

「モダニズム建築の先駆者」と言われた建築界の巨匠・前川國夫氏のもとで学んだ大宇根氏が辿り着いたのは、物理的な耐久性と、人心を集める普遍性を兼ね備えた建物であり、その方法論として生まれたのが、コンクリートの構造の外で断熱しそれを守るためにレンガを積むという工法だった。グランフィールズではレンガを砂岩に置き換えたものの、無駄にガラス窓を造らず、日差しを遮断するために窓を外壁から下げてエネルギー効率を良くするなどの工夫がなされている。

とはいえ、施主の思いをどうしたら形にできるかが最も重要だという考えのもと、あえてサービス動線が長くなっているなど、コストと相反する要素も多いのがこの建物。それは多少コストに目をつぶっても、ゲストに喜んでもらいたいというホスピタリティの発露であり、それ自体が芸術作品であることを物語っている。

 

グランフィールズカントリークラブ Grand Fields Country Club
住所 静岡県三島市五輪4716番地
電話 055-976-3111
クラブハウス設計 大宇根建築設計事務所
クラブハウス施工 鹿島建設
コース設計 浅見勝一