Special Interview

レダン特別インタビュー
プロゴルファー/藤田寛之

フジタの流儀。

text by Kobayashi Kazuto, photos by Konishi Yasuo,

46歳という年齢をものともせず、国内ツアーでその強さを見せつける藤田寛之プロ。海外メジャーに挑戦し、世界基準を肌で感じる第一人者は、孤独なフェアウェイで戦いながら、その一方で、日本のゴルフ界の現状に危機感を抱き、発信を行っている。その口調は穏やかだが、指摘は本質を突き、そして迷いがない。

自分のことを少し
信じられるようになりました。

レダン編集部(以下、レダン) 昨年は3勝を挙げて再び「強い藤田寛之」を強烈にアピールしましたが、その強さはどこから来るのでしょうか。特に40歳になるとともに年間での複数回優勝が始まりますが、その前と後では何が変わったのか、ステップアップのきっかけがあったら教えていただきたいのですが。

藤田寛之プロ(以下、藤田) それに関しては答えが見えていないんですよ。確かに部門別の成績を見るとよくなっているんですが、具体的にこの技術が向上して、というのは自覚がないんです。ただ海外のメジャー大会に出るようになって、そこで高いレベルのものを見て、またあそこに行きたい、成績を残したい、という気持ちでやっていたのが国内の成績アップにつながったのかな、と思っています。

レダン 今年の全米オープンではジム・フューリックと練習ラウンドを行っていましたね。

藤田 海外で結果を残している人とやらなきゃわからないことがあると思うんです。今はパワーゲームの時代ですけれど、自分と同じくらいの飛距離の中で誰が一番上手いのかというとフューリックなんです。運よく一緒に回ることができたんですが、世界ランキングもベストテンに入っているし、自分のカテゴリーで一番上にいる人がどんなプレーをするのか見たかったんですよ。ゴルフを教わるとかではなくて、どういうゴルフなのかを知りたかったんです。

レダン どういうゴルフでしたか?

藤田 ゴルフはミスのゲームですが、彼はミスを本当にしない選手でしたね。したとしても次で必ずリカバリーしてきます。ミスが続かないし、練習の時からほとんどミスをしません。それを間近で見て感じることができました。

レダン そういった海外での経験をフィードバックして強い藤田プロが作られてきたんですね。

藤田 みんなプロですから、プレッシャーのないところではすごいボールが打てます。ところが競技になるとまったく別のものになって、どこまで自分を信じていけるのかという世界になるんですね。海外のメジャーを経験し、高いレベルで物事を考えるようになって、もしかするとほかの選手よりも自分のことを信じることができるようになっているのかもしれません。

レダン これまでのゴルフ人生でターニングポイントとなったようなエピソードはありますか?

藤田 これっていうのはあまりないんですが、プロゴルファー藤田寛之が今あるのは、芹澤信雄さんという方がいたからだと思っています。芹澤さんはすごく明るい方で、自分は中に中に入っていくほう、悩むほうなんですね。それを芹澤さんは「そんなところで悩んでんじゃないよ、出て来いよ」って引っ張り出してくれるんです。精神的にも技術的にも大きな存在ですね。ですから一緒に行動するようになる1995年がひとつのターニングポイントと言えるかもしれません。

レダン 芹澤プロの言葉で忘れられないようなものってありますか?

藤田 具体的な言葉は覚えていませんが、芹澤さんの経験値からくるアドバイスは大きかったですね。それまでにもいろんなメンタルトレーニングをしていましたが、そんなものは何の役にも立たなかったんです。試合での恐怖とか緊張とかって、現場に立っていないとわからないじゃないですか。技術論にしても、言いたいことはわかるけど、現場では何の役にも立たないことが多くて……。たとえば「このネジがはまるはずだ」って言われたときに、「はめたことあるんですか?」と聞くと「いや、コンピュータの計算だとはまるんだ」みたいな方が多いじゃないですか。そんなものより、実際に苦労した人が「あの何番のねじがはまるよ」って教えてくれたらスパッとはまるっていう。そういうことの積み重ねが芹澤さんなんですよね。

Profile
1969年福岡県生まれ。高校1年でゴルフを始め、専修大学ゴルフ部で活動した後にプロ転向。プロ5年目の97年にサントリーオープンで初優勝。2010年にはゴルフ日本シリーズJTカップに勝ち国内メジャーを初制覇。2012年はゴルフ日本シリーズJTカップ3連覇を含む年間4勝を挙げて初の賞金王に輝いた。昨年はアジアパシフィックオープン ダイヤモンドカップゴルフを含む3勝を挙げて賞金ランク2位。ツアー通算18勝。葛城ゴルフ倶楽部所属。