REDAN's Mutter.

レダンの呟き。

パット・イズ・マネーの嘘。

text by Kobayashi Kazuto Illustration by Sasaki Goro

最近欧米のプロツアーでコースマネジメントの考え方が根本的に変化しているのをご存じだろうか? 以前は確実にフェアウェイをとらえられるクラブでティーショットを放ち、パー5では3打目に得意な距離を残して攻めるのがよしとされていたが、いまではとにかくピンに近づけたほうが得、ということになっているのだ。

これは「稼いだ打数」の概念が一般的になり、ロングゲームこそがスコアメークに大きく貢献することが知れわたったから。コロンビア大学のマーク・ブローディ教授はPGAツアーで放たれた1,000万回以上のショットのデータを詳細に分析し、1打の価値を評価する方法を考案したのだ。それが「稼いだ打数」であり、選手がどのショットでスコアを作っているかが明確になる。

たとえば460ヤードのパー4、ティーショットをドライバーで320ヤード先のラフに打ち込んだとしよう。この場合のティーショットの価値は、PGAツアー選手が460ヤードのティーからホールアウトするまでの平均打数4.17から残り140ヤードのラフからの平均打数3.15を引いた1.02であり、そのショットで0.02打稼いだことになるのだ。もしスプーンで打って240ヤード先のフェアウェイに運んだとすると、残りは220ヤードでそこからの平均打数は3.22。となるとその1打の価値は4.17-3.22=0.95となり0.05打損していることになる。つまり刻んでフェアウェイキープするより、ドライバーで飛ばしてしまったほうが、ラフに入ったとしても1打の価値は高くなるのだ。もしもフェアウェイをとらえたら残り140ヤードのフェアウェイからの平均打数は2.91だから、1打の価値は4.17-2.91=1.26打と跳ね上がる。また3mのパットの平均打数は1.61で、入れればその1打の価値は1.61で0.61打稼いだことになるが、はずしてタップインすれば価値は0.61打となり0.39打損することになる。

ブローディ教授がこのように全ショットの価値をカウントしていった結果わかったのは、一流選手のスコアの85%はグリーンに乗せるまでのショットが稼ぎ出していて、パッティングのスコアへの貢献度は15%に過ぎないということ。要するに「パット・イズ・マネー」が嘘だということだ。パープレーの72打のうちパット数は約30なので比重が高く思えるが、ほとんどは短い距離のタップインなのでそれ自体には1打の価値しかない。もちろんその週優勝するためにはパットを入れまくることが必要だが、コンスタントに稼ぐにはショットの質が重要なのだ。特にティーショットが重要で、ドライビングディスタンスが20ヤード伸びると1ラウンドあたりおよそ0.75打スコアが縮まるというのがブローディ教授の結論だ。

これがプロだけの話だと思ったら大間違いでアマチュアにも当てはまる。刻んで曲げたら大叩きの可能性が高くなるので、よほどのことがない限りドライバーを使ったほうがいいし、80ヤード残すよりは残り30ヤードまで持っていったほうが少ない打数であがれることはデータが証明しているのである。

 

こばやし かずと/ゴルフジャーナリスト。1966年神奈川県生まれ。株式会社電通を経て1994年『GOLF TODAY』編集長に就任。1997年に独立し、ゴルフメディアのプロデュース業やMCなど幅広く活動している。