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ハロー!レダン!
『オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ』

不朽の名作ホール

text by Nishizawa Tadashi photo by Miyamoto Taku

ジョージア州オーガスタにあった果樹園は「まさにゴルフ・コースになるのを待っていた」理想的な自然条件だった。球聖B・ジョーンズと英国人設計家のA・マッケンジー博士の黄金コンビがその365エーカー(約45万坪)で目指した理想のコースは当時としては画期的なものだった。ラフのない広いフェアウェイ、巨大なグリーン、数少ないバンカー(創設時には22個)などであらゆるゴルファーに愉しめる理想を追求した。お手本は『セントアンドリュース・オールド・コース』で、二人が生涯愛したコースだったから。

毎年恒例の“球宴”「マスターズ・トーナメント」で、18ホールはすべてが名物ホールと言っていいだろう。ただし、80年以上の歴史の中で、コース全域で100箇所以上の改修・改造が行われたが、ほとんどオリジナルのまま現在に至っているホールがある。それがクリーク越しに打つパー3の12番ホール。コース全域で最も低地にある11・12・13番ホールを“アーメン・コーナー”と呼ぶのはウォーター・ハザードがプレーを劇的にし、プレーヤーは神に祈りたくなるドラマの頂点だから。

試合では155ヤード、メンバー・ティで145ヤードの距離だから、ほとんどのプレーヤーがショート・アイアンを手に持つのだが、森の谷間に吹く風が渦巻くのと、ピンの立つ位置で距離感を惑わせられる。

もう一つの難題はティから見て、横長のグリーンがクリークの先に横たわるだけに見えて、実はグリーンは左が近く、右は遠い。左手前のグリーン・エッジで141ヤードとしたら、右手前のグリーン・エッジでは154ヤード、10ヤードの差があるのだ。つまり、ターゲットのグリーンは斜めに置かれている。これを設計の用語で、“対角線デザイン(diagonal design)”といい、このホールを“逆レダン・タイプ”にしているのだ。だから、真ん中のバンカーを中心に左半分と右半分とに分かれて小さなグリーンが二つ繋がっていると考えるべき? マスターズでも前半のラウンドでは左にピンが立ち、後半は右に立つのが恒例だ。越すべきクリークの幅はわずか54ヤード。ただし、風を読み、左右に立つピン位置次第で、ショート・アイアンの距離コントロールを微妙に操作する必要がある。

1932年、マッケンジーが描いた図面でも今の姿とほとんど同じで、このホールは不朽の名作なのだろう。

 

Augusta National Golf Club

2604 Washington Rd,
Augusta, GA 30904 USA
design/Bobby Jones,
Alister MacKenzie

 

にしざわただし/ゴルフジャーナリスト。1941年生まれ。1965年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。同年、ゴルフダイジェスト社入社。同社発行の月刊「ゴルフダイジェスト」誌編集長を経て、1996年1月にゴルフジャーナリストとして独立。

Hole 12th
par3
155yards