People's Talking.

美しい想い、美しい言葉。
プロゴルファー/ジャン・ヴァン・デ・ヴェルデ

興味が尽きない、ゴルフ。

Text by Suzuki Harue, Photos by Takeda Masahiko

1999年、第128回全英オープンゴルフ。舞台は24年ぶりの開催となったカーヌスティ・ゴルフリンクス。それは1907年にアーノルド・マッシーというフランス人が優勝して以来のフランス人ウイナー誕生直前の出来事だった。〝カーヌスティの悲劇〟として我々の記憶に焼きついた主人公の名前はジャン・ヴァン・デ・ヴェルデ。あの日から16年あまりの時を経た初夏のパリで、全仏オープンのディレクターとして活躍するその男にレダンは会った。

 

ジャン・ヴァン・デ・ヴェルデ
1966年フランス生まれ。87年プロに転向。22年間ヨーロピアンツアーメンバー(優勝2回)。2011年にセベ杯欧州大陸チームのキャプテンを務めた後、現役を退き、12年に全仏オープンのディレクターに就任。ヨーロピアンツアー、ライダーカップの委員も務めるほかSkyテレビジョンの解説者、フランスのユニセフ大使としても活躍。夫人と4人の子どもとともに現在は香港に暮らし、アジアとヨーロッパを行き来している。

全仏と全英、このふたつが
いつも重要でした。

レダン編集部(以下、レダン) フランスを代表するゴルファーとしてプレ

イし、現在はさまざまな肩書きで活躍

していらっしゃいますね。

ジャン・ヴァン・デ・ヴェルデ(以下、VDV) 2012年が全仏オープンのディレクターとしての最初の年で

す。FF golf Production(フランスゴルフ連盟 プロダクション)から私に、「新しいチャレンジに立ち向かう用意ができているか」とオファーがあり、それを受けました。最初はテスト期間的な扱い、1年後にはお互いにやめられる状態で。ビジネスの世界での私の実力は未知数でしたし、私自身それがわかっていませんでした。また10年ほど前から香港を拠点にしているので、フランスで仕事をしながら家族のいる香港に戻るのは簡単なことではありません。しかし、全仏オープンというものに対する私の思いは常にとても強く、また周囲の人たちの信頼が私を支えてくれる。その結果が今、つまり2015年もこの役職にあるという状態です。

レダン 今の仕事が気に入っていますか?

VDV はい、とても。プレイヤーとしてつねに重要視していたのが、全仏と全英。このふたつが私にとってはいつも重要でした。ですから、ある日「全仏の指揮をしてみないか?」といわれたとしたらどうです?これは願ってもない喜びですよ。この機会を逃すわけにはいきません。この仕事を任せてくれようという信頼を寄せられたことをとても光栄に思いました。

レダン プレイヤーと今と、ふたつの世界は違いますか?

VDV かなり違います。いずれも周囲に恵まれる必要があり、忍耐が要るというのは同じ。でもプレイでは、ときに極度の忍耐力を必要とされますが即結果がでる。つまり1日の終わりにはたとえば65とスコアがでる。週の終わりには一番あるいはビリとでる。しかしビジネスの世界ではそうはいかない。ときに素晴らしいアイディアを持っていたとしても、2年、3年あるいは5年がかりで現実のものになる。これは私にとってはまったく初めての経験。5年というのは、ちょっとオーバーかもしれないけれど、数カ月とか、とにかく時間がかかる。この時間のタームは今まで慣れていなかったことです。

レダン 99回を数える今年は、あなたがディレクターになって4回目の大会でした。

VDV はい。これまでの間、全仏を大きく変えてきました。エントランスやヴィラージュでのアトラクションを充実させて、観客もプレイができるようにしました。協賛メーカーでも、たとえばBMWでは、シミュレーター上でプレイしてホールインワンした人が1年間無料でBMWのクルマを使えるというプレゼントがあったり、ロレックスでは、時計を買った人が好きな文字を刻印してもらえるというサービスがあったりします。もちろん観客はゴルフのプレイを見に来るわけですが、ヴィラージュでの楽しみも大事。入場者がヴィラージュで過ごす時間が増えています。ひとり平均1時間15分ほどヴィラージュで時間を費やしているという数字が変革の成果を物語っています。ゴルフはまずスペクタクル(ショー)であると思います。スポーツのスペクタクルではありますが、それを見る環境も大事。ゴルフだけを見に来るわけではない。

レダン 大会はイベントであり、お祭りでもあるわけですね。

VDV そのとおりです。

レダン 選手時代にもそういう意識はありましたか?

VDV もちろん。なぜなら、まず私は世界中いろいろなところでプレイをする機会に恵まれたので、ツアーによってはとても革新的なものがあることを実際に経験しています。夜にはコンサートが開かれたり、ほかにもいろいろな催しがありました。そういったさまざまな体験が私の中に蓄積されています。だから今、私たちは、何か新しいことを発明しているわけではなく、私たちのメンタリティに合うかどうかを斟酌しながら、視野を広く持ってそれらを取り入れているところ。みんな違いますからね。たとえば日本人とフランス人とでは育ってきた環境が違います。どちらが優れているとかそういうことではなくて、国民性によって嗜好の優先順位が違っていたりする。その上で、自分たちの顧客により受け入れられるものを提供する。観衆はお客さんだと思っています。お金を払って見に来るわけですから、それに見合ったものを提供できなければいけない。一流のプレイを見るということのほかに。

レダン ところで、もう数えきれないほど話されたことでしょうから申し訳ないのですが、この質問はぜひともしなくてはなりません。99年の全英オープンのこと。

VDV 申し訳なく思わなくていいですよ(笑)。それはわたしの人生の一部ですから。

プロゴルファー/ジャン・ヴァン・デ・ヴェルデ