Contents
宮本卓の目線。
『サイプレスポイントクラブ』
Text and photo Miyamoto Taku
僕にとっての世界一のコース、サイプレスポイントは女神のような美しさ。
1929年、ペブルビーチで行われた全米アマでボビー・ジョーンズは不覚にも19歳の少年に負けた。しかし彼はすぐに帰る訳ではなく、出来たばかりの隣のサイプレスポイントでプレーすることにした。それは今までにプレーしたどのコースとも違っていた。しかも偶然コースにいたアリスター・マッケンジーに逢い、「完璧だ」と一言。ちょうどオーガスタナショナルの構想が出来始めた頃で、ボビー・ジョーンズはマッケンジーに設計を依頼することを決意。
コースと出会い、人と出会う。憧れのサイプレスポイントを歩いて13番ホールにさしかかったとき、僕は思わず声を上げた。これはまさしくオーガスタの13番だ。この波の音を聞きながら、翌年グランド・スラムを達成することになるボビー・ジョーンズは何を思ったか。
マッケンジーはオーガスタがオープンした1934年、サイプレスポイント近くのパサティエンポで64歳の生涯を閉じた。
みやもと たく/写真家。1957年和歌山生まれ。大学卒業後アサヒゴルフ写真部に入社。1984年に独立し1987年より活動の拠点を海外に移す。以来メジャートーナメントを中心に取材を行い、2014年マスターズでメジャー取材数は100に達した。独特の色彩で表現するゴルフコースの写真にはファンが多く、ペブルビーチのオフィシャルカメラマンを務めるなど世界的に活躍している。