REDAN's special.

特別企画 中日クラウンズ、青島健吾の挑戦。

空の向こうに、夢が待っている。

Text by Kobayashi Kazuto photos by Miyamoto Taku

国内ツアーで最も伝統ある「中日クラウンズ」に挑戦したアマチュアの青島賢吾。だが、トッププロでさえも恐れる難攻不落の和合は今年もその前に立ちはだかった。ガラスのようなグリーン、そして予測不能な風に翻弄されながらも、ハワイ育ちの天才ゴルファーは歯を食いしばって高い球を打ち続ける。いまはまだ敵わなくても、いつか攻略できる日がきっと来るだろう。大勢の人々の想いを乗せた白球は、大空に舞い上がりキラリと光った。

 

クラウンズ出場を決めたのは持ち前のハイボールだった

 今年56回目を迎えた伝統あるトーナメント「中日クラウンズ」に2年連続でハワイ出身の少年が出場したことを知っている人はなかなかのゴルフ通だ。

 少年の名前は青島賢吾。東京で生まれ、ハワイで育ったバイリンガルだ。9歳で帰国し六本木のアメリカンスクールに通っていたが、一昨年ハワイに戻り、地元の進学校イオラニ高校に通う16歳。

 彼がゴルフ部のエースとして活躍し、昨年ハワイの高校生チャンピオンになっているとしても、広いゴルフ界を俯瞰して見ればまだこれからの存在。にもかかわらず、現存する日本最古のトーナメントに出場できたのはなぜだろうか。

 その鍵を握るのが盛田和昭氏。ソニーの創業者盛田昭夫氏の実弟で、兄の代わりに家業であった盛田株式会社を継いだ人物だ。盛田株式会社は清酒「ねのひ」でよく知られる醸造会社で1665年創業。名古屋屈指の老舗名門企業を率いる盛田氏は一昨年、ハワイを訪れたときに賢吾少年と出会ったのだという。

「私は海外に行ったときは、時差解消のために着いてすぐにゴルフをやるんです。あのときもハワイに着いてゴルフ場に行ったら、そこにいたソニーハワイの人間が、この子と一緒に回ってくれませんか、と言うからまずは打ってみろと言ったんです。するとバーン!と高い球だ。やっぱりアメリカ育ちだから、アメリカ式の球を打つんだなと思ったんだけれども、こんな高い球を打てるんだったら面白いから、『クラウンズに出てみるか?』と言ったんだ。普通なら怖気づくんだけれども、『出てみたい』と言うからクラウンズの委員会に紹介したわけです」

 こうして、中日クラウンズの舞台となる名古屋ゴルフ倶楽部・和合コースの最古参メンバーである盛田氏の推薦によって、青島賢吾の存在は大会関係者の知るところとなる。それからいくつかのハードルを経て昨年、賢吾少年は夢の舞台への切符を手にすることになった。

 しかし和合は、アマチュアの、しかも15歳の少年がスコアを作れるほど甘いコースではない。というより国内トーナメントにおいて最難関と言っても過言ではないだろう。トッププロたちでさえ、パーを拾うのに四苦八苦するモンスターコースの壁は厚く、昨年はなすすべもなく2日間で終わってしまった。今年はそのリベンジを果たすため、コースを熟知しているハウスキャディとタッグを組むなど万全の態勢で臨んだのだが、やはり思い通りのプレーをさせてもらえない。

 スタートホールの1番はセカンドをグリーン左奥にはずし、アプローチがオーバーしてボギー発進。2番のパー5はドライバーをフェアウェイに運んだが、距離的に届く場所から5アイアンでレイアップしてパーを拾った。なぜ2オンを狙わなかったのかとラウンド後に訊くと、3番ホールの予行演習をしておきたかったのだと言った。2番でウッドを打って、3番のセカンドに一度もミドルアイアンを打たない状況で臨みたくなかったのだそうだ。その作戦は功を奏し、昨年いきなりトリプルボギーを叩いた鬼門の3番もパーでクリア。これはまずまずの滑り出しだと思って見ていると、4番パー3のティショットが左に曲がった。

 ボールは崖下の絶望的な状況だったが、崖にぶつけて左サイドのバンカーに入れ、そこから寄せワンしてボギーで収めた。ボギーパットは約2メートルの微妙な距離だったが、キャディの更科さんが読んだライン通りに打ってねじ込んだナイスボギーだった。

 続く5番も左に曲げなんとかボギーで収めたのだが、こうして選手のプレーを追っていくと、いかにこのコースがよくできているかがわかる。砲台グリーンは硬く締まり、回転の悪い球をその上に残すことを許さないから、アプローチショットをフェアウェイから打つことが重要になる。グリーンに乗ったとしても奥からは速く、ファーストパットをカップの周りに集めることすら困難。また微妙なアンジュレーションがあるため、短いパットでも思わぬ切れ方をすることがままあるのだ。

 それだけならまだしも、風の予測が難しいという条件が加わる。コース上を風が動き回り、時には吹き抜け、時には林にぶつかって逆の向きに走る。あるトッププロは「和合には風が上、中、下と3層あって、感じる風がフォローでもその上がアゲンスト、そのまた上がフォローということがある」と言ったそうだが、それらすべての動きを把握していないと、ボールを思い通りの場所に運ぶのが難しいのだ。実際、選手が打った質の高いショットが予想と違う風に持っていかれるシーンをたびたび目撃する。

 クラウンズで3連覇を含む5勝を挙げている青木功プロは、和合に来ると上ばかりを見ていたという。木の先の枝の揺れ方を見ながら風を読んでいたのだ。上から落とさないとグリーンに止まらないので、上空の風を読まざるを得なかったわけだが、名手といえども木の上で回る風を読むのは難しく、この試合だけはハウスキャディを使っていたと言う。

2日間高い球でグリーンを狙い続け、おおむねそれはうまくいったが、流れをつかむことができなかった。